1.今年度の研究の実施状況 (1)ライフヒストリーインタビュー調査(平成23年9月・10月・11月) 研究開始年度より継続して、青森県鰺ヶ沢町鳴沢地区および岩手県滝沢村柳沢上郷地区において、戦後緊急開拓で入植した旧軍隊関係者、および旧満州・樺太からの引き揚げ経験者を対象とした聞き取り調査を実施した。本年度の調査では、戦後高度成長期から現在に至る営農実績などについても調査することとし、職業経歴を長期的なスパンで観察・分析することを目的としたインタビューを行った。 (2)史資料収集調査(平成23年7月・平成24年1月) 青森県立図書館において、県内の戦後開拓史関連の統計類を中心とした史資料収集調査を実施した。併せて新たなデジタル資料が国立国会図書館で公開されたため、補完的な史資料収集調査を行った。 (3)収集資料・データの分析(平成23年9月~平成24年1月) これまでに収集した、(1)兵役経験者の就職問題、(2)労働行政・労働保護、(3)戦後日本人のライフコースに関する諸調査、(4)企業史、(5)戦後開拓史関連の資料について、資料の分類と分析を進めた。これらの資料群とテープ起こししたライフヒストリーインタビューデータとの突き合わせを行い、兵役経験者の戦後における職業経歴の再形成について、政策的動向と実際のプロセスとの関連について考察した。 2.研究成果の報告と総括 収集した文書・統計資料と調査データに基づき、戦後という時代における<軍隊から職業へ>というトランジションの位相について、および戦後間もない時期から高度成長期へと移行する過渡期における若者の進路選択のパターンについての分析結果を、ある戦後開拓地を事例とした論文として発表した。本論文を通して、本研究の主題であるトランジション問題からみたひとつの戦後社会像を提示し得たと考える。
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