研究概要 |
完備不完全情報ゲームを用いて出身階層間の教育格差の説明を試みるモデル(MMIの合理的選択モデル)を一般化して,二段階の教育達成推移をバックワードインダクションで分析するモデルを定式化した.また,進学率の均衡値の決定メカニズムを明らかにするために,エージェントベースドシミュレーションを使って,均衡が同時手番ゲームにおけるナッシュ均衡として予測できることを示し,比較的弱い合理性の集積結果として均衡値の予測の妥当性を理論的に検証した.さらに研究計画に基づき,Breen-Goldthorpeモデルの一般化を試みた.先行研究ではモデルから進学率を直接計算することができなかったため,出身階層間の進学率オッズを比較することができなかったが,新たに出身階層別に進学時の主観的成功確率を確率変数として定義して,変数変換により進学率を分布関数から逆算して,オッズ比を解析的に分析できるようにモデルを一般化した.ゲーム論モデルはLucas(2009)による線型モデルのフォーマルアプローチとは異なり,ダイレクトに出身階層人口比の変化が教育達成における出身階層間格差におよぼす影響を特定できる点に,その特徴がある.この進学率をもとに世代間移動のオッズ比を計算して解析的な分析を試みた.こうした解析的なアプローチにより,選抜された子供の成績分布の平均が上方にシフトすることで,階層効果逓減現象が起きるという理論的な予想を得た.
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