研究概要 |
階層帰属意識の形成メカニズムに関する論文 Hiroshi Hamada, 2012, "A Model of Class Identification: Generalization of the Fararo-Kosaka Model using Lyapounov's Central Limit Theorem, "Kwansei Gakuin University School of Sociology journal. Vol. 114:21-33.を刊行した.この論文では,リアプノブの中心極限定理を応用することで,従来はきわめて強く,非現実的な仮定のもとでしか,成立しなかった「階層帰属意識分布の正規分布漸近近似定理」がより一般的かつ自然な条件の下で成立することを示した. また今年度は,学歴、職業、収入といった客観的な階層属性と当人に与えられる間主観的な社会的地位の評価がどのように関連しているのかを明らかにし、社会階層の客観-主観関係を明確化するために実験的な調査であるビネット調査(架空の具体的状況に関する様々な記述を作成し、それらに対する回答者の評価や判断を測定する調査法)を実施した.これによって,理論モデルの経験的妥当性を検証するだけなく,他者評定に関しては,従来の階層研究の知見と異なり,学歴や職業の効果が階層帰属意識に関して,ほとんどないという知見が得られた.現在この成果は共著論文として投稿中である.さらに,階層帰属意識研究におけるFararo-Kosakaモデルと地位継承モデルが重回帰モデル(その適用において単純な数式による真の関係の近似という以上の積極的な根拠を従来持っていなかったモデル)の数学的基礎付けとなり得ることを示し,階層帰属意識研究という文脈における,計量モデルと数理モデルの統合的な発展の条件を検討した.
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