研究課題
最終年度となる本年度には、本研究の二つの柱となった「1.教育・雇用・社会保障制度の比較分析」と「2.教育・雇用・社会保障制度の特徴を考慮した計量的な社会階層分析」の成果をふまえ、東アジア各社会における教育・雇用・社会保障に関する制度的条件がどのような報酬格差を生み出しているのか、そしてそれはいかなるメカニズムによるものなのかについて、理論と実証の両面からの考察を行った。その結果、特に日本社会において(そして部分的には韓国社会においても)大きなものと認められる正規雇用/非正規雇用間、あるいは企業規模間の報酬格差は、正統派経済学理論によっては必ずしも十分に説明され得ないことが確認され、これを受けて本研究では、社会学的観点から、これらの格差を説明するための仮設的な視座の構築を行った。具体的には、これらの格差を「正当化」する規範・ロジックの特定とこれが実際の格差に結びつくメカニズムの解明を試みると共に、各社会における教育・選抜システムと社会保障・生活保障システムの特徴がこれらの格差生成メカニズムに与える影響について考察を行った。さらにこれらをふまえた上で、計量的な階層分析を行い、その妥当性を確認した。本研究の以上の成果をまとめ、国内外における学会・研究会・ワークショップにおいて積極的に成果の報告を行った。特に海外では、米国(2回)、韓国(3回)、カナダ(1回)の報告機会を得た。これらの報告は概して聴衆から大きな関心を持って受けとめられ、本研究が日本社会、あるいは東アジア社会の理解のために、またこれらの社会における社会階層理解のために、少なからぬ貢献をなし得るものであることが確認された。
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Proceedings of International Conference on International Conference on Internal Cleavages and Social Peace in East Asia
ページ: 67-96