1.1960年代から現代に至るまでの建築家による都市のリサーチに関する論考を執筆した。レム・コールハースとアトリエ・ワンを比較検討した論考を『建築雑誌』(日本建築学会)に、同じくアトリエ・ワンのリサーチの系譜を総括的に論じた英語論文をAtelier Bow-Wow : Behaviorology(Rizzoli)に、丹下健三らの地域開発センターや黒川紀章の社会工学研究所などの仕事を考察した論考を「αシノドス」に寄稿した。 2.建築家に限らず、各ジャンルの「文化人」の存立様態を文化社会学・メディア論的観点から考察した編著本の準備を進めた。そのなかで、建築家の磯崎新氏にクライアントの歴史的変遷に関するインタビューを行なったほか、「文化人の条件」をテーマとした論文を執筆した。知識人とは異なる、日本のメディア文化固有の産物として文化人を位置づけた。これらの編著本の作業は、本研究にとって、建築家の社会的位置を相対化し、その固有性を明らかにする点で意義深いものとなった。 3.現代における都市とアートの関係を、世界各地の具体的事例を通して紹介する「スペクタクル展-共振する都市とアート」(象の鼻テラス)の企画委員を担当した。また、同じく展覧会「デザイナーズ集合住宅の過去・現在・未来」(ミサワホーム株式会社)の企画監修を行なった。建築家、マスメディア、不動産、住まい手という多角的な観点からの分析展示を行ない、建築と社会を架橋する新たな評価軸を導入することができた。社会学者が企画監修をした建築展は前例が少ないという点でも独創的な成果となった。会期中のシンポジウム内容の一部は、「10+1 web site」に掲載された。 展覧会というメディアの特性を把握することで、論文や口頭発表とは異なる、社会学のアウトプットや伝達可能性を切り開いていくための大きな手がかりを得た。
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