1.建築家の有・名性の生産・流通・消費のメカニズムを相対化する研究の一環として、『文化人とは何か?』(東京書籍)を共編著で刊行した.日本において「文化人」がどのように語られ、いかにその曖昧な形象が成立してきたのかを、新聞・雑誌記事の言説分析を中心として明らかにした巻頭論文「<文化人>の系譜-界とマスメディアの交わり」の執筆と、建築家の磯崎新氏へのクライアントの系譜に関するインタビューを担当した。建築家のクライアントに関する研究はこれまで皆無に近く、その体系化に向けた布石となる成果をあげることができた。 2.ロッテルダムでは、オランダ建築博物館(NAi)での建築アーカイブとパブリック・プログラムに関する調査、ベルリンでは、ポツダム広場周辺を中心に1990年代以降の現代都市再開発と有名建築家との結びつきに関する現地調査を行った。昨年度に実施したパリ、バルセロナ、ビルバオなどの現地調査と比較検討することによって、グローバル化する都市の再開発と建築家の有名性をめぐる文化経済に関する見取図を得ることができた。 3.建築物とインスタレーションの関係を、「空間から環境へ」展(1966年)の考察を軸として論じた論文を、展覧会カタログ『建築はどこにあるの?-7つのインスタレーション』(東京国立近代美術館)に寄稿した。建築を図面、ドローイング、模型などの諸メディアの連関から捉え直すことにより、建築とメディアの関係について、単に雑誌などのマスメディアにおける表象分析にはとどまらない研究の進展を示すことができた。
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