本研究は、全国各地の公立の歴史系博物館における戦争展示の具体的な事例を取り上げ、そこで展開されている自治体による「戦争の語り」の内実とその姿勢を明らかにしていくことを目指すものであるが、初年度となる平成21年度においては、基本的に文献調査を中心に進めた。各博物館において発行されているガイドブック・展示図録・パンフレット・研究紀要など、各館の活動状況を把握する資料を入手したほか、先行研究に関する文献など多岐にわたる資料収集を行いつつ、研究課題全般に関する把握に努め、順次分析を行った。 あわせて、予備調査として、主に静岡県内の博物館における戦争展示の調査を実施し、静岡平和資料センター、浜松復興記念館、焼津市歴史民俗資料館、島田市博物館、藤枝市郷土博物館、三島市郷土資料館、沼津市明治史料館、浜松市博物館等における展示表象分析を行った。静岡平和資料センター、浜松復興記念館を除き、公立博物館の常設展示において戦争を扱う割合はごく一部であることが多かったものの、戦争展示のメッセージや手法等について、その概要や傾向を把握することができた。この結果を踏まえ、詳細な調査項目の検討を進めた。 次年度以降はさらに対象を拡大し、実際の展示内容の確認を行うなど本格的な調査に着手するとともに、その展示手法、解説パネルの文言、映像や写真の選択、展示資料の種類などのデータを集積することに力を注ぐ予定である。
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