平成21年度は、本研究の目的と研究年次計画をふまえ、おもにタルコット・パーソンズの社会学理論に関する文献情報および収集資料の整理、先行研究の分析検討を行った。 文献資料の整理については、これまでに収集した文献資料(未公刊資料を含む)を体系的に整理し、メタデータを作成した。キーワード、発行年などを取り込み、先行研究の体系的なとりまとめを行った。未公刊資料については、執筆年の同定、加筆修正の状況についても分析し、パーソンズ理論の展開についての新しい知見を提供できるデータベースの作成をすすめた。未公刊資料の情報を含めたデータベースは、社会学史研究の観点からも大きな意義がある。 先行研究の分析検討については、パーソンズの社会学理論の理論的含意と構築プロセスについて内在的に検討・分析を行った。とくに哲学的基礎、思想史上の位置づけ、学術的影響関係を解明することで、理論的構成および概念内容の考察を行った。主な分析対象は、本研究の学術的背景にもとづき、とくに晩年期(1970年代)の理論枠組である「人間の条件パラダイム」とした。 その結果、とりわけ医療、健康、生命に関する論考においては、実存哲学、心理学、精神医学、生理学といった幅広い学問領域と影響関係にあることが明らかになった。また未公刊資料のなかで重要と思われるものの翻訳をすすめ、今後の発表に備えた。パーソンズには未公刊のままになっている論考が多くあり、これを分析することは社会学理論研究において大きな意味をもつ。
|