これまでの研究成果を通して、一時的で固定的なモデルではなく、プロセスを重視した動態的なアプローチの構築が必要であるとの見解に至ったため、本研究は、地域ベース(Community-based)や地域主導(Community-driven)というアプローチに着目している。本年度は、海外調査を、ネパール、インド、チベットで行い、これらのアプローチの妥当性について比較を行った(一部は他の研究費を活用)。実際に調査をしてみると、これらのアプローチは、「地域」をどのように捉えるのか、「地域主導」とはどう進めていくのがよいのか、という議論が深まる前に開発援助プロジェクトに採用されることがあり、名目的なアプローチとなっている場合があった。さらに、この傾向は、海外に限定されず、日本国内の一部の村落でも同様の現象が起こっていることが明確となった。 ゆえに、かつて言われたところの「村落」「集落」「むら」というのは、いまや変容している、との実態を踏まえながら、「地域」の捉え方、「地域主導」のあり方、「地域」の動態性と重層性、「地域」のウチの人とソトの人のアクターの役割などを考慮に入れ、上記のアプローチと実践の現場をつないでいくことが必要とされている。 このような考察を深めていくと、村落の問題は、同根、同時代、同心円の問題であるともいえ、いわゆる「先進国」といわれる日本が、いわゆる「途上国」の手本となる一方向の関係ではなく、いまや、互いが手本交換できる双方向の関係性を構築する時期にきているとの見解に至った。
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