バーデン・ヴュルテンベルク州は、環境首都フライブルクがあるなど、環境先進国ドイツの中でも取り組みが注目されている。保守色の濃い同州において、緑の党を特徴づけている存在に、人智学や敬虔主義などの宗教的要因がこれまで指摘されてきた。平成22年度は、同州緑の党の成功要因について、インタビュー調査を実施した。緑の党州議会関係者および市議会関係者17名にインタビュー調査を実施した。その結果、同州の「根気よく取り組み発明する」や「考える伝統」といった地域的特徴を踏まえて緑の運動を展開していることが判明した。「根気よく取り組み発明する」は、歴史的に資源がない同州において、発明に取り組んで地域的発展を目指すことを意味している。発明に対する積極的姿勢は、オールタナティブなアイデアへの理解につながっている。また「考える伝統」は、同州出身のヘーゲルらをシンボルとしており、市民的自治に代表される啓蒙主義的価値観の基盤となっている。このような基盤にもとづいて政治的活動をしていることが、大規模駅開発「シュットットガルト21」に対する唯一の反対政党となり、市民の支持を得て、2009年の市議会選挙で第1党に躍進する一因となっているといえる。 オールタナティブ政党である緑の党が保守的な地域で成功した一因には、ヘーゲルら偉大な思想家の伝統を踏まえつつ、啓蒙主義的思想に基づいた市民的自治が可能な地域的背景があることが明らかになった。
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