バーデン・ヴュルテンベルク州緑の党は、ドイツではじめて州首相を輩出した(平成23年5月議会)。H23年度は、緑の党の躍進要因について、インタビュー調査を実施した。同州緑の党の躍進要因の一つには、S21反対運動が挙げられるため、緑の党州議会関係者および市議会関係者に加え、S21反対運動関係者に対してもインタビュー調査を実施した(合計10名)。S21反対運動は、州都シュットットガルトの中央駅を開発する計画である「S21計画」に対する反対運動である。緑の党は州議会レベルでは唯一、S21計画に反対してきた。 インタビュー調査の内容は、申請者がこれまでの調査で引き出した論点である「価値的保守」(Wert Konservative)という、バーデン・ヴュルテンベルク州緑の党が独自の理念としている内容を中心におこなった。価値的保守は、たとえば家族の金銭的繁栄を目指す「構造的価値」(Konstructive Konservative : CDUの理念とされる)と異なり、空間的な幸福を目指すものとされる。この概念が、バーデン・ヴュルテンベルク州緑の党の理念とされていることは、州首相クレッチマン(Winfried Kretschmann)の著書にも触れられている。インタビューの結果、価値的保守に基づいた緑の党独自の政策として、たとえば「歴史的建造物の保存」、「教育」、「債務を後世代に先送りしない財政」があることが明らかになった。そして、「歴史的建造物の保存」の一つに、シュットットガルト中央駅があり、また大規模な財政支出を伴うS21計画は、債務の観点からも「価値的保守」に相容れないことが判明した。
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