1.平成22年度実施質問紙調査の詳細な分析 平成22年度に実施したA社調査、および長浜市調査の詳細な分析を行った。 特に、年齢構成、出身階層、職歴、収入等について、カテゴリーごとの違いを詳細に分析した。これまで指摘されていたような若い世代が多く雇用されている状況は明らかになったものの、A社調査と長浜調査の比較からは、年齢について顕著な差は認められなかった。その一方で、平均収入、貯金、母国への送金など経済的な要素については、明らかにA社に雇用されている層の方が豊富であった。これはブラジルとの家族との関係についてもいえる。また、近年最も重視されている日本語能力については、それほど大きな違いは認められなかった。とはいえ、A社に雇用されているブラジル労働者の方が、「話す・聞く」、「読む」、「書く」いずれについても、「ほとんどできない」が多かった。A社調査からは、基本的に貯金や母国への仕送り、ブラジルでの不動産を所有しているといった経済的な条件が整えばブラジルに帰国することが推測される。逆に日本で子どもが居住している場合は日本での居住志向を高める。一方、長浜調査の結果から、一定の貯金をし、日本語能力を有することが、今後日本での滞在することを選択するという道筋が浮かび上がってきた。 2.調査研究報告 調査結果については、東海社会学会、日本都市社会学会で口頭発表を行った。ここで明らかにしたのはリーマンショック後の外国人の労働をめぐる状況と、その生活実態の比較から見えてくる今後のブラジル人労働者の定住傾向であり、定住層と帰国する層の二極化の実態が明らかになった。
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