法外世界が、いまや法支配を標榜する近代国民国家の間隙に深く浸透しているように思われる。なぜ研究で「法外世界」が今日問題となるのか。数千万人ともいわれる大規模な難民の出現に表れているように、法外世界を例外的な状態としてとどめず、むしろ「常態」化された世界としてとらえ、その可能性と展開を提示することが、環境問題の現場において以前にもまして重要性を帯びているといえるからである。本研究では、単なる法制度の一解釈というレベルをこえて、法外における常態世界の実相に即しながら、今ある法律をどのように最大限活用していくのか、という点において、法外世界と法制度を結ぶ結節点としての「場所」を設定するものである。この場所を設定することで、具体的な生活環境の権利を保障することができうると考えている。 上からの「公共性」でない、地域からの「公共性」、別の言い方をすると、手続き上の「公共性」でない、「環境の豊かさ」を生み出す"深い公共性"をどう再構築していくか、という現代的な課題と通底するものである。政策の寄ってたつ法律が「グレーゾーン」にあるとき、どのように行政は社会的弱者や劣悪な環境にアプローチするのかという点に着目して、「地域から公共性をどう組み立て直していくか」について実証を踏まえた政策論の提示を試みる。今年度は具体的に宮城県仙台市追廻地区、宮城県石巻市北上町十三浜地域を中心に行政や住民の方々から聞き取りを行うことができた。
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