研究課題/領域番号 |
21730422
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金菱 清 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (90405895)
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キーワード | 生きられた法 / 正義 / 公共性 / 環境 / 辺境 |
研究概要 |
本研究の目的は、人びとが土地に関わることで獲得してきた「正義(=正統性)」とそれを周りから注視する「公共性」のあり方について社会学的に分析することを目的とする。そして「環境正義」といわれる文化的な不公正と経済的な不公正の両者を統合するアプローチを目指す。 この研究途上で東日本大震災が発生したが、これは津波や原発のリスクを考えるうえでまさに本研究が投げかける「公共性」とは何かを問いかける問題である。 東日本大震災の被災者71人の体験談をまとめた金菱清編東北学院大学震災の記録プロジェクト『3・11慟哭の記録-71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(新曜社)を、2月下旬に刊行した。被災地域27市町村71人の切実な言葉が、541もの膨大なページの中に50万字にもわたってぎっしりと詰め込まれている。 今回本書で提示している新たな方法は、トピック・地域を複数に設け小さな出来事を濃密に描くことで、できるだけ現場の生々しい「声」に重きを置いて、実態のつかみにくい1000年規模の大災害を社会史としてまるごと理解するためのアプローチである。 今回用いた方法は、「震災川柳・震災日誌・仮土葬・遺体身元照合ボランティア・行方不明者捜索・火柱・津波・救命ボート・盗み・車からの脱出・民間ハローワーク・民俗芸能・障害者・介護・ヘリによる脱出・消防団活動・海の信用保証・協業養殖・遺体安置所・自殺未遂・うつ病・福島第一原発の瓦礫撤去・避難区域・失業・母子疎開・避難所運営・一時帰宅・家族同然の牛・スクリーニング・風評被害・脱ニート・液状化現象・山津波・長周期地震動・エコノミー症候群・新幹線閉じ込め・・・」などを描き出すことで1000年規模の災害を把握できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東日本大震災が発生したことを踏まえ、従来ある理論の適用範囲が実践面で明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、東日本大震災発生を受けて様々な取り組みが地域で行われている。そのなかでも宮城県知事が打ち出した水産業復興特区は漁業者の反発を招きいれている。漁村の在り方を公共性と環境正義の観点から調査し分析しようと考えている。
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