研究概要 |
本研究は、「どのような要因により、トランスナショナル・アイデンティティ、あるいは日本人アイデンティティの構築・表現が促されるのか」という問いを設定し、欧米の文化生産分野で活動する人々を事例に考察を試みた。最終年度である平成23年度は、国内での調査を実施し、さらに研究成果をまとめるための文献レビューと論文執筆を中心に行った。 調査では、東京あるいは丸亀市に滞在中の現代アーティスト、ファッションデザイナー計5名にインタビューを実施した。インタビューでは生い立ち、移住の経験、現在の意識・活動・ネットワーク、作品に表現されるアイデンティティについて語ってもらった。また、周囲の関係者-キュレーター、画商、広報、編集者・記者など-にもインタビューを行った。さらに、現代アート分野の個展、アートフェア、ファッション分野の展示会に訪れ、参加者を対象とする聞き取りと参与観察を実施した。調査実施後、録音したインタビューのテープ起しを行い、インタビュー・テキストを作成して内容の分析を行った。 その結果、欧米都市のアート界およびデザイン界における人種的ヒエラルキーと、それに基づく職業・ネットワークの配置および白人性を「標準」とする強固な価値観が「日本らしさ」の構築を促している、という重要な点が明らかになった。 上記の調査結果を、第84回日本社会学会年次大会、および成蹊大学アジア太平洋センター講演会で発表した。また研究成果を論文にまとめ、International Journal of Japanese Sociology Vol.20,『マス・コミュニケーション研究』79号で発表した。
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