平成21年度は、ポスト育児期の女性のワーク・ライフ・バランスに対する就業キャリアのインパクトを分析するにあたっての、分析モデルの構築および分析手法の検討を中心におこなった。就業キャリアを把握すること、また、それがワーク・ライフ・バランスに与える影響を分析するためには、パネルデータを用いることが必要となる。そのため平成21年度においては、パネルデータを分析するための手法に精通し、その手法を用いた分析モデルの構築につとめた。パネルデータ分析の手法を学ぶにあたっては、ICPSR(Interuniversity Consortium for Political and Social Research)が主催するパネルデータ分析に関するインテンシブなワークショップ(2009年6月29日~7月3日於・ミシガン大学)に参加し、最新の分析手法やパネルデータ分析の最近の動向を学んだ。 分析手法の検討および分析モデルの構築を行いながら、いくつかの分析モデルに基づいて、女性の就業とワーク・ライフ・バランスに関する実際のデータ分析を進めた。そのひとつは、女性の就業キャリアをとらえる前提となる、育児期の女性の就業の規定要因の分析であり、もうひとつは、ポスト育児期の前のライフステージとなる、育児期の女性の就業とワーク・ライフ・バランスとの関連についての分析である。前者については、日本では高学歴を取得することが必ずしも女性の就業を促進する効果を持たないこと、またその背後に日本の短時間労働市場が、高学歴女性に魅力的でないという要因が存在することが推察された。後者の分析では、育児期のパートタイム就業が女性の心理状態にネガティブな効果を持ちうることが示唆された。これらの分析の中間報告を海外および国内の学会において行い、海外および国内の研究者からコメントを得、分析モデル・分析手法の精緻化に努めた。
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