平成22年度は、昨年度に検討を加えた分析モデルおよび分析手法にのっとって、日本の女性のワーク・ライフ・バランスに対する就業キャリアのインパクトについてのデータ分析をおこない、その研究発表をおこなった。主に用いたデータは、公益財団法人家計経済研究所が1993年以来毎年実施している「消費生活に関するパネル調査」である。主な分析結果は以下の通りである。1)末子が6歳以下のライフステージにおいてパートタイム就業している女性は、専業主婦の女性に比べてメンタルヘルスの状態がよくない、2)末子6歳以下のライフステージにおける、パートタイムでの再就職は、女性のメンタルヘルスを悪化させる。こうした分析結果は、女性の非正規雇用が増加傾向にある近年の雇用状況をふまえたとき、子どもをもつ女性のワーク・ライフ・バランスが難しさを増しつつあることを示唆している。同時に、子どもがある程度成長した段階で、主としてパートタイムで再就職するという女性の就業キャリアが多数派であるなかで、本研究の分析結果は、パートタイムでの比較的早期の再就職が女性のワーク・ライフ・バランスを達成していくうえで必ずしも効果的ではない可能性を示唆している。 平成22年度においては、以上のような研究成果を国内外の学会にて発表し、海外および国内の多様な研究者らからコメントを得、さらなる研究の展開についての示唆を得た。
|