平成24年度においては、これまでの日本におけるデータ分析の結果をふまえ、ポスト育児期(における女性のワーク・ライフ・バランスについての国際比較研究をおこなった。国際比較研究をおこなうことによって、労働市場の構造、政策体系、社会規範などの要因と、女性のワーク・ライフ・バランスの関連が明らかにできると考えられる。 比較に用いたデータは、第2回全国家族調査(NFRJ03)と2003年韓国家族調査(KNFS03)である。日本および韓国のデータ分析の結果、以下のようなことが明らかになった。第一に、ポスト育児期における女性の「家族内の負担感」は日本では就業形態によって差異はみられなかったが、韓国では専業主婦と比較して非正規雇用者に高い傾向がみられた。第二に、韓国では夫の積極的な家事参加が女性の良好なメンタルヘルスと関連すると同時に、夫の情緒的サポートが、女性が感じる家族内での負担感がメンタルヘルスへ与えるネガティブな影響を緩衝する効果をもつことが明らかになった。一方で日本では、こうした効果のいずれも見られなかった。こうした結果には、韓国においては子どもの教育期にあたるポスト育児期に、「子どものよりよい教育達成を実現する」母としての役割が非常に強く期待されていること、非正規雇用者が不利な立場におかれる韓国の労働市場の構造が関連していると推察された。 以上の分析結果から、女性のワーク・ライフ・バランスは、その社会特有の労働市場の構造や教育制度、社会規範が関連していることが明らかになった。こうした24年度のデータ分析から得られた知見、およびこれまでの日本のデータ分析の知見をもとに、研究全体の総括をおこなった。
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