今年度は、来年度(平成22年度)におこなう調査の基盤を固めることを中心に研究活動をおこなってきた。 具体的には、中国の日系企業への調査依頼のアポイントメントをおこなった。20社弱の上海日系企業と連絡をとり、可能な場合には、そこで働く現地人マネジャーから基礎的な聞き取りをおこなった。平成21年7月31日から8月9日までの9泊10日の日程で、上海に進出した日系企業で働く14名の中国人マネジャーへの基礎的な聞き取り調査を実施した。 現在、聞き取り調査の結果を整理している段階であるが―申請者がこれまでフィールドワークに従事してきた台湾・香港に進出した日系企業のケースとは異なり―中国に進出した日系企業には2種類の中国人マネジャーが存在することがみえてきた。一つの種類は、現地で採用された中国人マネジャーであり、現地子会社の雇用形態が適用される中国人スタッフである。もう一つの種類は、日本の本社で採用になった現地人マネジャーで、日本企業の中国進出に伴い、本社からの派遣駐在員として上海の日系企業で駐在するようになった中国人マネジャーである。このタイプの中国人マネジャーは、日本の本社の雇用形態が適用されているために、上海で採用された中国人マネジャーとは、その特質を異にしている。来年度は、このような2種類のマネジャーの存在に気を配りながら中国での調査を継続していくことになる。 さらには、今回の研究課題である「センス・メーキング」に関しては、既にフィールドワークを終えた台湾の事例から研究発表をおこなった。2010年2月22日から2月23日に、台湾中央研究院社会科学研究所と東京大学情報学環との共催で開催されたワークショップ"IOS-IASA Joint Workshop of Young Sociologists"において""Sensemaking"Processes of Creating a "Field" of Japanese Corporate Organizations in Taiwan"と題する研究発表をおこない、台湾人社会学者との意見交換をおこなってきた。
|