本研究は、消費・廃棄されるが、グローバルに流通するポピュラー・メディアを収集・保存・展示する博物館に着目し、文化を文化たらしめ、その消滅と保存を境界付ける力学を明確化・精緻化し、社会学的に探求するものである。21年度にはポピュラー・メディアの博物館における収集・保存・展示実態の把握を行った。 具体的には、日本の京都国際マンガミュージアム、韓国の韓国マンガ映像振興院、フランスのCite international de la bande dessinee et de l'imageの実態を把握するためのフィールドワークを行った。各館の文化政策や地方行政とのかかわりなど、政治、経済的側面からの把握をはじめ、収集・保存・展示の理念やその実行の程度について文書資料、統計資料の収集を行うとともに、現地調査として博物館学芸員らへのインタビューを行った。これによって、各国の博物館の位置づけには、歴史意識やナショナリズムのありかたが大きく影響している様が明らかになった。 また、京都国際マンガミュージアムにおいては、次年度の関心を先取りし、来館者調査を実施した。この結果、通常のミュージアムとは異なる来館者行動を把握することができ、「マンガ」という媒体が生み出す経験の特徴の一端を捉えることができた。
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