本研究は、消費・廃棄されるが、グローバルに流通するポピュラー・メディアを収集・保存・展示する博物館に着目し、ポピュラー文化の消滅と保存を境界付ける力学とはいかなるものであるのかを、社会学的に探求するものである。これにあたり、(1)ポピュラー・メディアの博物館における収集・保存・展示実態の調査、(2)来館者の博物館体験や、博物館が存在することで生まれる実践を、ドキュメント分析、非構造化インタビュー調査および記述式質問紙調査の内容分析、トラッキング法などを用いてとらえようとしている。 22年度には、特に(2)に重点を置いて研究を進め、博物館関係者および来館者にむけた調査を実施した。その結果、博物館に集う人々のポピュラー・メディア体験を捕らえるための調査方法論について、再検討が必要であることを確認した。また、博物館設立側の論理をより深く理解するために、村おこし、町おこしの文脈との関係に注目していくことが必要であることもわかった。この成果は、延辺大学で開催されたシンポジウムで発表し、有意義な意見をえた。地域振興政策としてのポピュラー文化の保存への動きは、グローバルな現象として共有されつつある。 また、昨年度実施した京都国際マンガミュージアムでの来館者調査の結果を、論文等の形で報告することができた。今後、より深くこの調査結果を読み解くために、広島市立まんが図書館および、宝塚市立手塚治虫記念館での来館者調査の実施を検討しており、現在、パイロット調査を終了している。
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