本研究は、販売職に就く人々を対象として、その準拠集団や技能意識を独立変数、職務満足や勤続・離職意思などを従属変数とした調査仮説に基づき、質問票調査とヒアリング調査を実施するものである。また、勤務先企業の販売員管理の方法(動機づけ、職務の定義、タスク・成果・努力ベースの報酬・評価制度、自律裁量の程度など)といった、経営管理論的変数も仮説の検証に加味する。特に、非正規雇用・短期従業の繰り返しによって特徴づけられるサンプルと自称"優秀"とするサンプルとの比較分析をおこなう。 初年度は、販売業やサービス業のオペレーション戦略を豊富な事例によって取り上げた著書の翻訳を通じて、調査項目の洗い出しをおこなった。また、損害保険販売の事例を用いて、商品取り扱い経験とオペレーション・コストとの関連性を分析した。その結果、事前に実施していた自動車や住宅、生命保険などの事例と同じように、経験の蓄積による顕著なコスト削減の実態を把握することはできなかった。すなわち、(これまでの方法では)販売業の技能や効率性は経営指標に現れないことが確認された。そこで、販売職に就く人々の身辺により密着した調査を実施するプロセスに入った。 これまでに、日用品、アパレル(特定セグメント向け)、同(オール・セグメント向け)に従事する販売職の人々を対象に簡易な質問票調査を実施した。その結果として、今後はより注意深く、準拠集団や技能意識と勤務先企業の(認識レベルにおける)安定性などの変数との交互作用に注目していくことが求められる。また、調査仮説について、準拠集団の存在は勤続意思にも離職意思にも影響することが示唆されており、今後は定量的な支持を得ていきたいと考えている。
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