本研究は、中高年のソーシャル・インクルージョンに影響する地域システム要因と個人の生沽構造要因を定量的調査および定性的調査から検討し、各自治体の重要な政策課題となっている地域福祉の推進に寄与することを目的とする。H21年度は、計画通り文献レビューとJGSSに基づくボランティア活動・地域活動の計量分析を行ない、個人の生活構造と地域貢献活動の関連を把握した。また、事例地域である東大阪市の公共的機関・団体への定性的調査および地域貢献活動の定量的調査の準備を行なった。JGSSデータに基づく計量分析として、第82回日本社会学会において、中高年の地域ボランティア活動に関わる研究報告、および、ボランティア活動の経験や市民団体への参加率の経年変化を部分的に扱った日本人の意識と行動の変化に関わる研究報告を行った。これらの成果は論文化し、JGSS研究センターが刊行している『研究論文集』に掲載した(JGSS研究センターのWebサイトから全文が閲覧可能)。また、第19回日本家族社会学会において、中高年の生活構造や地域福祉に関わる計量分析として、介護の社会化意識に関わる研究報告を行った。事例地域である東大阪市における地域システムの把握および中高年の地域活動の実態把握の準備として、東大阪市役所で2回、東大阪市社会福祉協議会で4回のヒアリングを実施し、既存の調査票や市内の基礎情報を得た。また社会福祉協議会の協力のもと、ボランティア団体の代表者からなるボランティア連絡会やCSWの会、校区福祉委員会やボランティアサロンに参与してヒアリングを行い、個人の生活構造レベルとは異なる中間集団レベルの課題に関わる定性的調査を開始した。これらの定性的調査は、本学の公共経営学科のゼミ活動とも連動させ、本学HPから活動内容の一部を公開している。さらに、町丁目レベルのデータから、各校区の基礎情報を地図化することにも着手した。
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