生漆生産者を対象とした社会的ネットワークと資源利用に関する調査のための予備的調査・検討を行った。とくに、生漆生産者らが関係している農山村の社会構造を明らかにすることと、ウルシ木所有者のウルシ木育成や販売の意思決定要因を解明することを目的として、予備的調査・検討を行った。 農山村における社会構造解明に関しては、岩手県北部の村落構造に関する古典的な文献の精読と現地での聞き取り調査を進めた。これまでに、集落内の本家・分家関係には単一の本家が存在する場合や複数の本家が存在する場合など様々なケースがあること、組織の機能によって集落内で形成される組織と集落を超えて形成される組織が存在すること、本家・分家関係および集落の組織ともに時代によって変化してきていることなどを確認することができた。ウルシ木所有者の意思決定要因に関しては、岩手県二戸市におけるウルシ木所有者を対象とした聞き取り調査を行った。これまでに、雑穀や豆類を栽培する必要性が薄れていくなどウルシ木植栽の背景に変化があったこと、ウルシ木を販売する場合に本家・分家関係を通して行われる場合とそうでない場合が存在することなどを確認することができた。以上の知見は平成22年度中に実施する予定の本調査において活用する予定である。
|