当該年度は初年度で得られた知見を踏まえ、 (1)障害の社会モデルの持つ理論的可能性を批判的に検討するため、機会平等理念を基調とする社会システムへの障害者の包摂が惹起する課題とその克服の方とについて分析し、 (2)その中で質的に異なる課題領域として浮上した「発達障害」に関わる問題に関して、現代社会において要請される能力観の変容を踏まえて理論的な課題を整理し、 (3)それらを踏まえて、「割当雇用」や「合理的配慮」といった具体的な政策オプションを取り上げ、それらを十分に機能させるための社会的条件について検討することを目的として研究を進めた、 (1)・(2)の成果については、2件の口頭発表を行うほか、更生労働科学研究費補助金研究事業の分担研究として実施した「『合理的配慮』と障害/能力観の変容」(「障害者の自立支援と『合理的配慮』に関する研究」2010年度報告書)の一部に反映されており、更に書籍化に向けた準備を進めている。 また、(3)の成果について、Matsui et al(2011)において、特に割当雇用制度に関して社会モデルの政策科学的な展開に不可欠な規範的条件を検討し、川島他編(2011)において、より広範な市民的包摂を進めるための社会的条件を示した。
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