本研究は介護サービスの質と事業経営状態との適正なマッチングポイントを明らかにすることを目的としている。研究目的を達するため以下の2つを研究計画の柱とした。 I.情報公表制度データを中心とした、自治体所有データの分析 II.神奈川県下の事業所を対象としたアンケート調査 平成21年度は主としてIの研究を行った。 介護サービスの質と事業経営状態との関係性を検討し、適正なマッチングポイントの析出を試みた。具体的には、介護サービスの経営状態については利用者人数に着目し、介護サービス情報公表制度で公開されている神奈川県の全県データを分析することによりサービス指標を構築し、介護サービスと事業所の適正規模について検討した。情報公表制度における居宅介護支援の「調査情報」は最終的には、56項目の小項目で構成され、各小項目について59項目の確認のための材料の「あり、なし」を公表している。 確認の材料‘なし'の割合が10%以上であった27項目に対し主成分分析を行い、その第一主成の主成分得点をサービス指標とした。ここでとりあげる取り上げる介護サービスは、居宅介護支援(ケアマネジメント)、訪問介護(ホームヘルプサービス)、通所介護(デイケア)の3サービスである。 介護サービスの質と適正事業規模の関係について分析した結果、介護経営の安定化という面で、より多くの利用者の確保が必要であるが、介護サービスの質という側面からみても、利用人数の多い事業所でサービスの質が高い傾向にあることが確認された。ただし閾値のようなものがあり、一定の利用人数になるとサービスの質に変化はなくなることが示唆された。
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