研究概要 |
今年度は、平成22年度から実施した療養病床の実態調査の結果をふまえ、追加的に高知県における「無医地区」を対象としたヒアリング調査を実施した。これら2つの調査から以下のことが明らかとなった。 まず、特に患者の区分に用いられる医療区分について、回答施設の84.6%がそのあり方そのものに問題があると考えていることが分かった。医療区分1や2に該当する患者が果たして医療の必要度が低く、退院可能であるといえるか、疑問が残る。また、現在の診療報酬・介護報酬が十分な療養・看護・介護を実施できる内容・水準にないなど、重要な問題が指摘された。現在の状況において、療養病床をはじめ老人保健施設や介護福祉施設においても適切な療養、看護、介護が受けられるか、さらなる検討が必要である。 療養病床の転換の意向については、以前から転換を希望する施設は皆無である一方、回答施設の76.9%が転換を希望していないことが明らかとなった。また、転換の現状についても、すでに転換したあるいは転換を決定した施設が7.6%であるのに対し、転換しないあるいは未定である施設が合わせて88.5%を占め、病床転換はほとんど進んでいない。 一方、療養病床入院患者のうち、退院可能な患者が一定存在することは事実であるものの、退院がその患者にとって望ましいとはいえない場合があることがわかった。このことは、退院可能だと判断される患者のうち約6割は退院後の行き先が決まっていないこととも関連し、現実的な問題として非常に重要である。高知県の療養病床は7,198床あるのに対し、介護保険施設は介護老人保健施設で2,061床、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で3,598床にとどまり 、受け皿となる介護施設等の整備が重要な課題となる。 過疎化高齢化が進む地方において地域ケアを実現するには、地域の特性をふまえた条件や前提を検討することが必要である。
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