本研究は、基本所得とフェミニズムの交差に立脚しながら、基本所得がジェンダー秩序に与えうる影響を検討し、それをフェミニスト社会政策として練り直していくための予備的作業を行うことを目的としている。 基本所得とフェミニズムは各々、福祉国家への批判を異なる仕方で提出してきたが、その志向性の中心は、「脱商品化」「脱家族化」にあるとひとまず整理できるだろう。そこで平成21年度は、以下の二点を作業課題として研究を進めてきた。第一に、社会政策における脱商品化・脱家族化の両概念を再検討するとともに、両者の関係を整理した。しかしながら、女をめぐる両概念の関係はそれほど単純ではない。そればかりか両者はしばしば二律背反的な関係に置かれうる。そこで第二に、基本所得がとりわけ女にとってどのような影響を持ちうるのかについて、脱商品化/商品化、脱家族化/家族化の観点から考察し、新たなフェミニスト社会政策となりうるための条件を探った。 以上の研究成果については、査読制論文にまとめた。(「ベーシック・インカムとフェミニスト・シティズンシップ-脱商品化・脱家族化の観点から」『社会福祉学』vol.50-3)
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