本研究では、ベーシック・インカム(以下、BI)とフェミニズムという二つの福祉国家批判およびその交差を論じた。両者の志向性の中心は各々脱商品化、脱家族化にあると整理できるが、女をめぐる両者の関係はしばしば二者択一的なものとして論じられてきた。そこで本研究では、フェミニズムのシティズンシップ論に依拠し、脱商品化/脱家族化の観点からBIのとりわけ女にとっての含意を考察した。考察の結果、およそ三つの立場に類型化できる従来のフェミニストシティズンシップ・モデルは、いずれも脱商品化・脱家族化を同時には志向しえないことが明らかになった。これに対し、BIのシティズンシップ・モデルであれば、両者の二律背反を解消し、これを同時に志向しうることが明らかになった。こうした作業は、今後の新しいフェミニスト政策構想を考える際の一助にもなりうる。
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