本年度は、研究全体の枠組みと22年度実施予定のインタビュー項目を検討するために、障害者のライフコースに関する理論の整理、既存データの再分析をおこなった。前者においては、障害者障害に対する意味づけの揺らぎ、社会的に承認された価値観との葛藤、社会比較と社会的アイデンティティに焦点を当てた。後者においては、約40人の男性脊髄損傷者から、重要な他者(家族、障害者の友人)、援助専門職、サービス、障害者に関する社会意識に関する語りを抽出し、インタビューの枠組みを検討したところ、同種の障害者との関連が、社会的アイデンティティ理論とのかねあいから重要であると考えられた。先行研究において十分な検討がなされていない部分であり、重要である。 また、自治体の障害者施策に関する住民会議の議事録を検討して、障害者個人と家族や地域社会、自治体といったつながりを記述する枠組みを見いだそうとしたが、明確な知見は得られなかった。加えて、テキストマイニングによる先行研究を検討し、形態素抽出後の統計的手法の妥当性を検討し始めた。テキストマイニングには多様な立場があるため、現時点では明確な手法を生み出せなかった。 これらの作業で得られた知見は、不十分であるが、大阪府、府下市町村等の障害者施策やニーズ調査に活用していただくように、担当職員に説明を行った。 これらの研究成果を、国内外の雑誌に投稿したが、採択には至らなかったので、引き続き改稿し、改めて投稿する予定。特に意味づけの揺らぎ、同種の障害者との関係性に焦点を当てたい。
|