本研究の目的は、わが国の特別養護老人ホーム(以下「特養」)においてスタンダードになりつつあるユニットケアを、それを規定する諸要因に注目しながら社会学的に分析することである。今年度は新築型および改修型の老人福祉施設を運営している社会福祉法人M(以下「法人M」)を重点的な調査対象地とした。具体的には新築型の特養「U」、改修型の養護老人ホーム「M」および特養「S」である。法人Mの歴史および現在運営している事業および職員体制、各事業所における職員配置等に関するデータを収集した。法人Mでは、2010年1月よりインドネシア人介護士の受け入れを、宮城県内の福祉施設としては初めて実施している。外国人介護士の導入が職員配置のありかたどのように影響するか、それに伴いユニットケアの質がどのように左右されるのかについて明らかにする必要性が生じてきた。そこで我が国における外国人介護士受け入れに関する基礎資料を収集するとともに、法人Mの関係者へのヒアリングを開始した。 また、法人Mが入居者の生活の質の向上をねらいとして各事業所における信仰の場(神社や観音、地蔵)の設置に取り組んでいることから、スピリチュアルケアについての文献収集をおこなったうえで、法人Mの事例について資料収集および関係者への聞き取りを実施した。高齢者福祉施設が直面する現代的課題を明らかにするとともに、ユニットケアを規定する諸要因の社会学的分析をおこなうことができた。
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