福祉社会の形成において、ボランティアを受け入れる組織のボランティア確保の困難性に着目し、協創という視点から組織間のボランティア確保のあり方を明らかにすることが目的である。平成23年度は、これらの目的を明らかにするために平成21年度にインタビューを行った市民活動団体代表者への追跡調査を実施し、調査結果の分析を行った。 組織間の協力行動に関しては、組織同士の協力関係は形成されておらず、共同事業等はあまり行われていないことが分かった。しかし、ボランティアの確保においては、組織間での人的交流が盛んにおこなわれているほど充足していることが明らかになった。このことは、組織に所属する個人が組織に縛られることなく、自由に他組織の活動にも参加している結果と推察される。 追跡調査からは、行政や社会福祉協議会という中間支援組織とのかかわり持つ組織は増加傾向にあった。さらに、組織運営方法に関しては、コアメンバーのみのよる意思決定方法よりも、多くの活動者の声を活動に反映させる方法が増加していた。活動者個人の調査からは、複数の団体にコミットする活動者の存在が組織をつなぐ橋となっていることが明らかになっている。そのため、組織運営方法の変化は、ボランティアの声を拾い上げ、他組織との協力関係を結ぶ基盤を形成する萌芽と推察される。 以上の結果から、福祉社会の形成においては、他組織との協働は事業レベルでは促進されていない事が明らかになった。しかし、ボランティア活動団体は、活動者による下からの協力関係の基盤が形成されつつあり、組織形態も活動者の声を取り入れやすいものに変わりつつあることが明らかになった。
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