本研究は、シルバー人材センターの退会に関連する要因を明らかにすることを目的とした。退会者という組織から離れていった人びとに焦点をあてることによって、今日のシルバー人材センターが抱えている問題点を検討した。 第一に、国内外のエイジズムの解消を目指したプロダクティブ・エイジング研究の文献を収集・整理した結果、シルバー人材センターは、定年退職者に臨時的・短期的な就業機会を提供している機関として評価されており、ほかの先進国への適用可能性も示唆されていた。 第二に、昨年度から引き続き、桜美林大学加齢・発達研究所が実施した「シルバー人材センターでの就業に関する意識調査」データを用いて、退会者の類型化を試みた。クラスター分析の結果、退会者は「介護・家庭の事情型」「自分の健康問題型」「仕事不満・ミスマッチ型」「センター以外就業型」の4つに分類された。とくに「仕事不満・ミスマッチ型」に約3割の退会者が分類されており、センターでの実際の活動と会員がセンターに求めるニーズのずれが示唆された。また「センター以外就業型」は、会員継続年数も短い、非常に流動性の高い人々であった。こうした労働市場への参入・退出を繰り返しながらセンターに加入・退会している高齢者に対する各種プログラム(「シニアワークプログラム」と呼ばれるパソコン業務・警備・訪問介護などの技能講習、無料職業紹介事業、一般労働者派遣事業など)の評価を地域ごとに行う必要性が示唆された。
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