2009年度は、1990年代以降の社会福祉基礎構造改革や地方分権などの流れの整理し、地域福祉推進政策に関連する報告書(孤独死、地域福祉)や事業の整理を中心に研究を進めた。 地域福祉の大きな問題として注目されている「孤独死」については、2007年から「孤立死防止推進事業(孤立死ゼロプロジェクト)」が始められている。また、これからの地域福祉の在り方に関する研究会がまとめた報告書『地域における「新たな支え合い」を求めて-住民と行政の協働による新しい福祉-』においては、「孤独死」などの問題を地域がどのように受け止めていくかの提言がなされている。 そこで、「孤立死防止推進事業」におけるモデル地域や報告書に取り上げられている事例を中心に更に詳しい分析を加え、実際に地域においてどの程度地域福祉が推進されているのか研究を進めた。 具体的には、千葉県松戸市常盤平団地の「孤独死ゼロ作戦」と、川崎市多摩区のNPO法人「コスモスの家」が推進している「孤立しないまちづくり」について、それが何を目指し、どのように実施されているのか、成功の秘訣は何かということについて刊行書籍やヒアリング等を中心の調査・分析を行った。これら二つの地域の事例においては、自治会・民生委員などの旧来型の地域福祉の推進主体と、NPOによるボランティアという新しい推進主体という大きな違いがあるものの、地域住民のリーダーシップが「地域社会のセーフティネット」を構築することに寄与することが明らかとなった。 また、国際的に「孤立」や「社会的排除」に対してどのような対応がなされているのかについて、海外学会(国際老年学会)に参加することによって、大いに示唆を受けた。
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