今年度は、とくに各地域レベルでなされている「セーフティネットの構築」の実現のためになされている事業や活動の参与観察を中心に研究を進めた。 4月には、松戸市常盤平団地の「孤独死ゼロ作戦」について、NPO法人「孤独死ゼロ研究会」が新たに立ち上がったこともあり、その設立集会への参加や、具体的な活動として実施しているふれあいサロンなどの参与観察を行った。10月には、神戸市内の復興住宅(HAT)におけるLSA活動について、担当者への簡単なインタビューや資料収集を行った。この活動は神戸市と兵庫県でそれぞれ行われているものであるが、それぞれの主体にインタビューをする必要性を感じた。また、神戸市内の更生施設へのインタビューも合わせて実施することが出来た。さらに、大阪市西成区のあいりん地区の参与観察も行った。あいりん地区では複数のNPOや更生施設、「福祉マンション」や公的な福祉センターなど、一つの地域内に異なるセーフティネットが複数存在する。これらがどのように連携し合っているのかに興味を持った。 こうした課題から、3月には神戸市・大阪市における再度のインタビュー調査を予定していたが、東日本大震災によりそれがキャンセルになってしまった。次年度の課題としてぜひ達成したい。 また、「セーフティネットの構築」とは若干違う視点で、青森県鰺ヶ沢市で行われている地域づくり活動の参与観察を行った。地域福祉の課題は各地域によって異なるが、過疎化が進む地方においては、人をどのように集めるか、どのように地域活性化するかということが、人びとの生活に大きな影響を与えると考える。様々な工夫を持った地域づくり活動の場に参加し、地域活性化が地域での生活やセーフティネットの構築の前提として必要であることを理解した。
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