本年度においては、「地域社会のセーフティネット」を構築する場の一つとして「地域における居場所」に着目し、様々な事例の検討を行った。 東京都港区の「芝の家」「三田の家」は誰もが立ち寄れる場所であり、そこで自然と多世代交流がなされるような工夫がされている。孤立した子育てや孤独死などの問題が多発する中で、支援ということを強調するのではなく、ゆるやかな見守りや多世代による無理のない交流を重視することは、現代の人々にマッチしているといえよう。 一方で、「地域における居場所」になかなか行きづらい、支援が必要な人がいることも事実である。横浜市港北区の公田町団地は高度経済成長期に建設され、現在高齢化が進展し孤独死問題も生じている。そこで地域住民がNPO法人を立ち上げ、スーパー跡地にコミュニティカフェや青空市を開設し、ボランタリーに認知症や一人暮らしの高齢者を支援しているのが「お互いさまネット公田町団地」である。 東日本大震災の被災地である仙台市宮城野区内の仮設住宅に設置された「みんなの家」は、地域住民が自由に集う場となっているが、現在は仮設住宅からの転居も増えて岐路に立たされているとも言える。また、高齢者、障がい者、子どもなどが一緒に過ごす、いわゆる「富山型デイ」と呼ばれる「居場所」として長野県東御市の「岩井屋」を見学した。ここでは、地域に開かれた施設も目指し地域活性化にも一役買っている一方で北九州市のNPO法人ホームレス支援機構による元ホームレスの方の「居場所」としての抱撲館は、まさに今、地域との摩擦を超えるための様々な努力がなされている途上である。その他、京都市の精神障がい者の方によるコミュニティカフェなどの見学も行い、「地域における居場所」のあり方や意義は地域により異なること、それでも人々が集うことから様々な関係が生まれ、それがセーフティネットの構築につながることが明らかとなった。
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