本研究では、EU均等(差別禁止)法政策の内容とその経済・社会的意義を、EU諸機関の政策文書、法(基本条約、指令や規則等)、関連施策を軸に明確にした。次に、その内容のEU、加盟国・地方おける履行状況等を文献及び訪問調査に基づき把握し、これらを比較することで、EU内における多様性と一定の収斂(共通枠組み)を検討した。検討を踏まえ、EU全体の均等法政策の到達点や課題、今後の方向性をまとめた。加えて、EUと国際機関における動向の交錯(例えば、EUによる国連条約の批准等)について検討を行い、複層的なガバナンスの新たな形成とその構造を把握した。 以上を受け、EUが2000年代以降、均等法政策の対象として新たに設定した「障害」、「年齢」、「性的指向」、「人種・民族」、「信条・宗教」の事由を視野に入れ、日本におけるこれら各事由の均等法政策への示唆をまとめた。 全体として、社会的に不利な立場にある人々が、主体的に社会に参画する多様な手段とこの背景にある理念を、多角的に研究し明らかにした。
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