本研究は、(1)日本人男性と婚姻関係にある外国人女性のドメスティック・バイオレンス(以下「DV」と表記)被害に関して、その実態を把握し、日本人の被害者とは異なる被害の背景と特徴を明らかにするとともに、(2)外国人DV被害者への現状の支援展開の問題点を分析し、DVの温床となる背景の予防的観点を含む、長期的な視点からの支援プログラムを構築することを目的としている。 外国人女性DV被害の内容は、日本人女性の被害とは異なる特徴を有することが指摘されているため、平成21年度に実施した研究においては、外国人女性のDV被害の背景と特徴に関する調査を行い、その支援展開が直面している問題と課題を明確化した。具体的には、文献研究と併せて聞き取り調査を実施しており、聞き取り調査は、外国人DV被害者支援にかかわる日本国内の団体、および日本から帰国した被害者支援にかかわるフィリピン国内の団体を対象として行った。なお、DV対策は、被害者支援に限定されるものではなく、DV防止対策や加害者対策など、多面的な対応が求められることは言うまでもない。そして、被害者と被害者間の関係も状況に応じた多様な側面を有する関係として把握する必要がある。しかしながら本研究は、DV関係の再構築など、問題の解決が困難なケースの考察を通して、DV関係からの離脱を困難にしている要因や、現状の被害者支援の問題点を明らかにし、効果的な支援の方策を検討することを意図していることから、あえて被害者への対応を中心に検討し、生活再建に向けた支援の方策について考察した。
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