本研究は(1)日本人男性と婚姻関係にある外国人女性のドメスティック・バイオレンス(以下「DV」と表記)被害に関して、その実態を把握し、日本人の被害者とは異なる被害の背景と特徴を明らかにするとともに、(2)外国人DV被害者への現状の支援展開の問題点を分析し、DVの温床となる背景の予防的観点を含む、長期的な視点からの支援プログラムを構築することを目的として実施したものである。 そこで平成22年度においては、外国人女性のDV被害の背景と特徴をまとめた上で、実際の支援展開における問題と課題を明確化した。そして、平成21年度に実施した調査の結果を踏まえて効果的な支援の在り方について考察を行った。具体的には、外国人女性のDV被害は、在留資格の不安定さや日本語によるコミュニケーションおよび情報取得の困難さ、差別意識、ジェンダー、国家間の経済格差などさまざまな因子が複合して惹起される問題であるために、多面的な排除の構造への対応が不可欠であることを示した。また、個人か社会かという一方的な働きかけに偏らない、複層的構造を有する包括的な支援を展開する必要があることを明らかにした。さらに、被害者の自己回復を第一義に考え、被害者のストレングズ強化を目的とするエンパワメントを行うと同時に、より巨視的な見地から、文化的、社会的、経済的要因を検討し、生活上の諸問題に対応可能な制度的基盤を築くことが急務の課題であることを指摘した。
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