平成23年度の計画において、(1)「地域住民の高齢者支援パワー尺度」による地域の変化の評価に向けて、はじめに平成23年2月から3月(平成22年度調査)にかけて実施した調査により収集されたデータの整理および平成20年度調査と平成22年度調査のデータを比較し、「地域住民の高齢者支援パワー尺度」の信頼性及び妥当性について検討を行うこととした。続いて、(2)整理されたデータによって、「地域住民の高齢者支援パワー尺度」を使用して、平成21年にはじまった農産物直売所の取り組みを地域住民のパワーという視点から評価を試みる予定であった。 現段階において、これらのデータの分析は途上にあり、十分な成果を確認するに至っていない。「地域住民の高齢者の支援パワーを高める」ことの前段階として、平成23年度においては、地域住民のパワーが高まることが求められる根拠を明らかにする分析を進め、研究成果の発表に取り組んだ。特に、本研究のフィールドである限界集落において、大変重要な課題である住民の転出の問題と地域住民の高齢者を支援するパワーの関連を明らかにし、この研究成果を発表するに至った。「地域住民の高齢者支援パワー尺度(SPES)」の下位尺度である「地域の高齢者福祉に対する影響力意識」の得点が高い場合、「元気な時」「他者の世話が必要になった時」ともに、有意に永住希望を持ちやすくなる可能性が示唆された。この結果から、「地域の高齢者福祉への影響力意識」が高い地域住民の場合、その地域住民は永住希望を持ちやすくなり、地域住民の高齢者を支援するパワーを高めるアプローチは、限界集落への永住を選択できる可能性を高めることが示唆されている。元気な状態であっても、他者の世話が必要な状態になっても、自分自身が地域の高齢者福祉をよりよいものにする力を持っているという意識を持つことができれば、地域での生活継続を希望できる可能性が高まると考えられる。
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