本研究は、(1)居宅生活に移行した元ホームレスへのアンケート調査を通じて彼/彼女らの生活問題を明らかにするとともに、(2)元ホームレスを対象とした自立支援プログラムを策定している福祉事務所へのヒアリング調査を通じて福祉事務所の援助課題を明らかにすることによって、自立支援プログラムを活用したホームレス支援の実践モデルを開発することを目的とするものである。 平成21年度は、当初の計画通り、上記(1)の調査を実施した。名古屋市内でホームレス支援活動を行っている笹島診療所の協力を得て、同団体の支援を通じてアパート生活に移行した116名から回答を得た。本調査を通じて、アパート生活に移行してもなお食事や金銭管理、健康などに関する困りごとを抱えている実態が明らかになった。特に、今回の調査では、社会的排除や相対的剥奪の視点から、住宅設備・家電製品の保有状況、社会活動への参加状況、サポート・ネットワークの状況について詳細に質問したが、ほとんどの項目において排除・剥奪された状況にあることが明らかになった。 ともすると、ホームレス支援の課題は居住場所の確保のみに重点が置かれがちであるが、アパート生活に移行した後も生活問題が継続していることは、ホームレス支援全体の在り方を構想するにあたって有益な知見であると考える。 平成22年度以降は、元ホームレスを支援する立場にある福祉事務所側の課題を明らかにし、今回の調査で明らかになった当事者側の課題と照らし合わせながら、生活保護の文脈からのホームレス支援の在り方についてより考察を深めたい。 なお、平成21年度の研究成果については、データの集計や分析に追われ論文・図書の形で公刊することはできなかったが、調査結果の概要を報告書として製本し、関係者に送付した。
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