研究概要 |
児童自立支援施設における構造面における権利擁護の取り組みと,処遇過程や自立支援計画の策定・実施における児童の「意見表明権」の保障の実態について把握し,その運営や処遇上の課題について検討することを目的に,複数の児童自立支援施設に訪問し,職員へのヒアリング調査を実施した。また,2011年2月~3月にかけて全国の児童自立支援施設(58施設)を対象に郵送によるアンケート調査(有効回収率60.3%)の結果を「児童自立支援施設における権利擁護の実態に関する調査研究」と題し,日本司法福祉学会第13回全国大会にて発表した。 分析の結果,施設により取り組みの差異が見受けられたが,意見表明権の保障および児童への説明責任の重要性についての施設の認識は高いことが伺えた。だが一方で,情報開示のあり方,子ども会議・子ども自治体の取り組み,人権教育やプログラムの実施,アドミッション・ケアや日常的に「権利ノート」や「生活のしおり」を活用すること,施設の「権利ノート」作成と作成への児童の参画,子どもの評価の反映をめぐっては,実施度,必要度ともに低い結果となり,施設による認識や取り組みの違いが顕著であった。 このことから,権利擁護の一環として子どもの意見表明を保障する取り組みは体制的に整いつつあるが,その取り組みが児童にどのような影響を与えているのか,体制やシステムの活用の有効性等については,支援の受け手である児童からの評価の仕方やその評価基準も含めて検討していく必要性があることが示唆された。また,自立支援のプロセスへの参加を可能にするような,意見を聞く(尊重する)ための手続きとその尊重・配慮の度合いや基準,子どもの特性や能力に合わせた方法で,関連している情報を子どもに開示する施設側の「説明責任」など,これらを裏打ちする環境整備と援助技術をいかに現場に定着させていくかという課題が明らかとなった。
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