研究概要 |
日本では現在、富裕層と低所得者層との格差が広がり、格差社会の時代になってきている。さらに、ワーキングプアと呼ばれる人々まで出現してきており、自殺率も高い割合である。このような日本の格差社会の改善を図るために、貧困問題への取り組みや地域再生が活発であるイギリスの取り組みを研究することが目的である。 平成21年度は、日本の貧困状況を把握するため大阪市西成区のフィールド調査を行った。西成区を取り上げた理由は、日本の中でも貧困率が高く、生活保護受給者数も多いためである。西成区の生活保護の現状を見ると、生活保護人員は年々増加傾向にあり、生活保護受給者では高齢者世帯が多く受給していることが特徴である。地域的移動により西成区に住むようになった人や失業により生活保護を受給するようになった人など、地域的なものによる部分や社会的、経済的による影響も関係していた。また、西成区の生活保護受給者の健康状態は、全体として良い状態ではなく、病気で通院している割合も高くなっている。 このような背景のもと、生活保護受給者への支援としては本人の自立を目標としたプログラムが実践されている。ここで言う自立とは、就労自立だけでなく、日常生活の自立やボランティアへの参加となども含まれるものである。ただし、支援を行っていく際の人的資源の確保や三位一体改革による財源の影響など、現在の日本では課題が多く残っている現状である。 今後は、イギリスにおける貧困問題や地域再生の取り組みを調査することで、どのような制度・政策があるのか、システムの内容や財源の状況などを調べ、日本への示唆としていきたい。 参考文献:1. 厚生労働省編[2009],『厚生労働白書(平成21年版)』ぎょうせい.2. 大阪就労福祉居住問題調査研究会編集・発行[2006],『大阪市西成区の生活保護受給の現状』.
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