日本では現在、富裕層と低所得者層との格差が広がり、「格差社会」と呼ばれる時代になっている。派遣労働等によるワーキングプアの問題や年間3万人を超す自殺者が続いているような状況である。このような日本の格差社会の改善を図るために、貧困問題への取り組みや地域再生が活発であるイギリスの取り組みを研究することが目的である。 平成22年度は、イギリスの取り組みを調査するためにロンドンにおけるフィールド調査を行った。主な訪問先は、(1)Department-of Health(保健省)、(2)Social Enterprise London、(3)Cafe15、等である。(1)は、日本の厚生労働省に一致する省庁であり、貧困問題に対する国の制度・政策、今後の施策について、担当者からのヒアリングおよび資料を入手した。イギリスでは、公的な福祉を重視する労働党から民間の福祉を掲げる保守党に政権が代わったため、現在ではNPOやボランタリー・セクター等の活動が活発となっている。また、Social Enterprise(社会的企業)という新しい概念が出てきており、行政と民間とのパートナーシップが強調されている。 (2)は、社会的企業の活動を調べる際に中核となる機関である。イギリスの社会的企業は、貧困者に対する就労支援を実施している。パソコンの訓練や会計の勉強をする等、仕事に就くための技術を身につけることを目的にしている。社会復帰を目指すために料理を覚え、レストランで働くことができるような社会的企業もある。(3)は、実際に技術を身につけた貧困者がコックとして働いていうレストランであり、雇用状況やお店の雰囲気、お客の反応等を確認するために訪問した。 今後も、このようなイギリスにおける貧困問題や地域再生の取り組みを調査することで、どのような制度・政策があるのか、具体的な活動はどのように行っているのか等、国と地方自治体との関係や社会的企業やボランタリー・セクターとの関連を調べ、日本への示唆としていきたい。
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