「NPOのアドボカシー」をテーマとした本研究では、他の外部資金も充当しつつ、いくつかのNPOに関する予備調査、本調査を実施した。研究代表者の仮説の通り、総体として当該NPOにおいて「事業パートナー」としての行政機関のプレゼンスが拡大し、「事業化」が進行していた。 また、こうした事業化にも大きな影響を及ぼす、外部・内部環境の変化が顕在化し始めていたことから、本研究はその把握に務めた。具体的には2008年の「政権交代」にルーツを持つ、障害者自立支援法の大幅な見直し、行政機関による公開の「事業仕分け」、等は、地方自治体、中央省庁におけるNPO政策、福祉政策に一定の影響を及ぼした。結果的に、組織の再編、ステークホルダーとの関係の見直し等、NPOの活動にも影響を与え始めている。 NPOはこれまで、「当局」(アドボカシーの対象相手)の「政策の連続性」を前提として事業およびアドボカシーを実施してきた。しかし、今日、日本のNPOは「連続性」を前提としない環境において、事業を実施し、他方でコミュニティにおけるアドボカシーを行う必要がある。そのテーマを追求するため、歴史的アプローチで検証すると共に、政権交代が常態化している韓国の研究機関とアドボカシーに関連する共同研究を行い、研究代表者が現地で招待講演を行うなど、一定の研究の進化がみられた。
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