昨年度は、ストレングス-パワー変容過程版エコスキャナーを用いた演習時の受講生の反応やレポートの整理・分析を行った。その結果、大半の受講生が利用者のストレングスに着目する視点の獲得を実感できたことがわかった。こうした教育効果を確認できた一方で、ストレングス教育にかかわる先行研究はあまりみられない。そこで今年度は、社会福祉士養成課程におけるストレングス教育の現状把握に重点を置き研究を行った。 具体的には、(1)相談援助系科目(「相談援助の基盤と専門職」「相談援助の理論と方法」「相談援助演習」「相談援助実習指導」「相談援助実習」)担当教員へのヒアリング調査項目の作成、(2)ヒアリング調査の実施と結果の分析、(3)日本社会福祉学会第58回秋季大会での報告、(4)エコシステム研究会やソーシャルワークにかかわる国際会議への参加、の4点をつうじて研究を行ってきた。 まず(1)相談援助系科目担当教員へのヒアリング調査項目の作成については、相談援助系科目のなかでのストレングス教育内容や方法に加えて、教育背景も明らかにするため担当教員の所属学科や科目の体制も聞き取れるよう工夫した。そして承諾を得られた社会福祉士養成校の4年制大学教員3名に(2)ヒアリング調査を実施し、結果を分析した。本研究の経緯やヒアリング調査結果は、(3)日本社会福祉学会第58回全国大会で報告を行った。報告会場にいた社会福祉士養成校教員からは本研究の意義への賛同を得ることができた。また(4)エコシステム研究会やソーシャルワークにかかわる国際会議への参加をつうじて、エコスキャナーの精緻化への示唆を得たり、ソーシャルワークにおける本研究の位置づけを確認したりすることができた。 しかしストレングス教育の現状把握の先行研究や調査実施などに時間を要したため、ストレングス演習の枠組みを提示するには至らなかった。これについては、本研究を継続していくうえでの課題としたい。
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