平成21年度は、高齢者福祉施設の職員による虐待行為の発生と繰り返しに影響を与える要因の探求という本研究の目的に対して、文献研究、インタヴュー調査、アンケート調査を実施した。まず文献研究では、国内外の先行研究と本研究の計画の関連性を検討し、また高齢者福祉施設の職員のストレスやバーンアウト、職員の人間関係、そして施設運蛍に関する文献検計し、インタヴュー調査での質問項目を収集した。そしてインタヴュー調査では、施設長、管理職者、介護職員など計18名を対象に、ストレスや、上司や部下、同僚との関係などについてインタヴューを行なった。その結果、介護職員のストレスほ先行研究同様、職場内人間関係に起因するストレスを感じている者が多かった。それに対して管理職者では、管理職と介護職を兼務している者ほど業務の多忙さに起因するストレスを感じているようであった。また、管理職への昇進自体がストレスとなっている者もいた。そしてそれらの職員のストレスなどをすべての施設長は重大なことと認識し、対応策を図っていた。しかし介護職員からみるとその対応策が功を奏しているだろう施設とそうではないと思われる施設とがあった。その違いは職員たちの意見を吸い上げる運営方針などに起因していると思われる。そしてアンケート調査では、管理職者などの上司や施設長などの管理責任者がどのように職員たちのストレスに対処していると職員が認識しているのか、また施設内人間関係やストレスなどと施設内での虐待行為がどのような関係にあろのがを検計するために、188名の職員を対象に実施した。その結果、職場の人間関係や昇進、並びに休暇の取得状況とストレスに関連を見出すことができた。 本研究で得られた知見は、これまでにほとんど検討されてこなかったため、今後の高齢者ケアにおいて大きな意味をもつ研究と考えられる。
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