研究概要 |
本研究は児童養護施設,及び乳児院における心理職の活用方法や活動内容について検討するものであり,心理職の入所児童に対する有効な支援のあり方やケアワーカーとの有効な連携のあり方などを明示することを目的としている。平成21年度は,児童養護施設や乳児院における心理職の活用状況や活動状況を詳細に分析するために全国の児童養護施設,乳児院を対象としてアンケート調査を実施し,施設形態や規模,心理職の雇用形態などによる活用状況や活動内容の相違を実証的に分析した。その結果,児童養護施設において,施設は心理職の育成や活用システムについて問題点を抱えており,心理職は単に生活場面で心理職として活動するというだけではなく,ケアワーカーと同じように生活支援に従事しながら心理職としての役割を果たさなければならないというダブルロールの問題を抱え,心理職としてのアイデンティティを確立できないでいるという問題が顕著に示された。こうした中で心理職の活用を進めるためには「心理職活用のシステムを構築すること」「施設外部の資源を活用すること」がキーポイントとなることが示唆された。一方,乳児院では心理職には子どもに対する(治療というよりも)発達支援や家族へのアプローチが求められていた。しかし,現状では家族へのアプローチに対する施設からの評価は低く,心理職は家庭支援専門員をはじめとするケアワーカーと連携を深めながら家族へのアプローチを充実させる必要があることが示唆された。児童養護施設,乳児院双方において,心理職の育成や活用,心理職の活動内容に関するシステムやガイドラインを構築することが,入所児童に対するより有効な支援やケアワーカーとの有効な連携を進める上で,1つのポイントとなることが明らかになった。
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