研究概要 |
児童養護施設及び乳児院において「施設が心理職を活用するためのガイドライン」及び「心理職が有効な活動を展開するためのガイドライン」(以下,ガイドライン)を作成することを目的とした研究を展開した。子どもたちの生活の場における先駆的な心理臨床実践である臨床心理士による学校臨床心理士事業の展開,特に制度化のプロセスについて学校臨床心理士ワーキンググループの取り組みについてのインタビュー調査等を実施し,新たなコミュニティにおいて心理臨床活動を展開する際のガイドライン作成の方向性についての示唆を得た。さらに,平成21年度の全国調査から得られたデータや周囲の同業専門職への聞き取りによって得られた「有効に機能している」と評価される施設において「どのように心理職が活用されているのか」「心理職がどのような活動を展開しているのか」についてのインタビュー調査をおこなった。こうした調査からは(1)心理職が子どもたちの発達的側面に着目していること,(2)心理職が生活場面で表出する子どもたちの問題行動にアプローチしようとしていること,(3)管理職が心理職の活用に関する方針を持っていること,(4)施設に心理職を受け容れるレディネスがあること,などが重要な要因として存在する可能性が明らかになりつつある(インタビュー調査は平成23年度も継続予定)。加えて,こうした調査から得られたデータをもとに複数の児童養護施設及び乳児院において心理職の活用や心理職の活動をサポートする臨床実践を展開し,より多くの施設において活用することが可能な「ガイドライン」に含まれる項目の選定を進めている。こうしたエビデンスの抽出やガイドラインの作成は,心理職の有効な活用や心理職の効果的な活動内容についての方向性を示すものとなり,児童養護施設及び乳児院において子どもたちに対する有効な心理的ケアを進める一助となると考えられる。
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