本研究の目的は、高齢者の当事者主権が、介護者の権利やケアの質とあわせて保障される介護体制のあり方を展望するという構想のもと、高齢者の当事者主権を促す形態とされる「介護給付使途の自己決定」モデルについて、自己決定の支援機能、介護者支援、ケアの質確保という3つの視点から、ローカルな実践事例に立脚した分析を通じ、その充実・整備にむけた制度運営や諸アクター間の協働に関する課題および展望を提示することを目的とする。初年度は「介護給付の使途の自己決定」モデルの理論的検討、「マイケアプラン・ネットワーク」や「Cash and counseling」といった事例の既存資料の収集、国内のマイケアプランの実践団体事務局へのヒアリングを行なった。また、供給モデルを日本の政策に位置づける文脈可能性を探る予備的作業として、日本の介護政策の動向を整理した。 介護給付使途の自己決定モデルには、「消費者」としての実践モデルに加え、「市民権」としての実践モデルがあることが示唆された。また、ケアの質管理、介護者・介護従事者の確保育成、当事者主権を巡る政策アジェンダは、マクロな政策動向としての「ケア資源の重点化(医療介護連携)」のあり方により、影響を受けることが示唆された。次年度以降は、こうしたマクロな文脈をふまえ、具体的な事例分析を行なう。また、海外事例については、当初計画したアメリカの事例(消費者モデル)に加え、市民権モデルと消費者モデルのバランス関係を検討する上で好事例であるフィンランド(普遍主義的市民権としてのケア供給から、近年、ケア資源の重点化・供給再編に着手)等における「給付使途の自己決定モデルのあり方についても、検討していく。
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